C-part

 

「敵PT接近中、交戦になります!」

紅いPTとその後ろについている2体のPTは、mk2の格納庫を目指して進んでいた。その速度は戦車砲や迫撃砲の妨害があるため決して速いものとはいえないが、それでも彼らは確実に進んでいった。

「PT?思ったよりも早く来たわね」

紅いPTのパイロットの名前は瀬名ミク。歳の20代くらいで、その紅い髪と青い瞳がハーフかクオーターであることを証明している。

彼女は部下の報告を聞きつつ独り言をもらした。それを無線機が拾ったらしく、部下は、

「そうですね…あちらの方で何かあったんでしょうか?」

律儀に答える。

「まあいいわ…どっちにしろ、やることは分かってたんだから。マゴロクEソード、装備!」

紅いPTは腰に装備されていたカタナのような武器を構える。それに習って部下たちも。

「このPT『INAZUMA』の力、見せてやるわ!」

『INAZUMA』と呼ばれたPT達は、マゴロクEソードを構え、敵のPTに向かって突撃していった。

 

 

ほぼ何もかもが上手くいったというのにも関わらず、マサキは困惑していた。上手くいきすぎるのだ。マサキの乗っているmk2は、マサキの思うがままに動いてくれ、さっきから放たれる戦車砲などはオレンジ色に光るバリアーが出てきて勝手に防いでくれる。

そして、マサキの追っ手であろうPT部隊は、どうやら紅いPT達とぶつかったらしく此方に来ない。

本当に上手くいきすぎていたが、マサキは特に神様などは信じてはいなかったため、何にも感謝はしなかった。

 

 

「せあ!」

紅い『INAZUMA』が舞う。マゴロクEソードをビュンビュンと振り回し、敵PT達を殆ど瞬殺の形で倒していく。

「戦いは、華麗に美しくって奴よ」

「瀬名一尉、mk2の反応がありました、北東800!」

部下は、ミクは顔を歪めた。ミクは当然ながらmk2にマサキが乗っているなどとは思っていない。敵のパイロットが出撃してきたと思ったのだ。

ミクがそちらの方向に顔を向けると、確かにそこには黒いシルエット。

しかし、それは本来なら堂々たる出陣の筈なのだが、どうにも動きがフラフラしている。それ以前に、NERVの戦車砲の攻撃を受けている時点で、それの異常は簡単に察知できた。

そして、見かけの異常さよりも、ミクはそれのパイロットに何か不自然な『モノ』を感じた。NERVの戦闘員なら誰もが持っている、あの『敵』と認定した者に対する容赦の無い残酷性が無いのだ。適格者としての力を持っているからか、ミクにはそれが感じ取れた。

「あれ……どうも様子がおかしいですね」

「やはりそう思う?アレはNERVにとっては敵視されているようね」

ミクは戦車砲を見ながら。

「ねえ、アレと何とか通信できないかしら」

「やってやれない事は無いでしょうが……もしそれが大掛かりなNERVのトラップだった場合は、我々での対処は不可能です」

「大丈夫よ。あのパイロットは、私達の敵にはならないわ」

妙に確信に満ちたミクの言葉に、部下は首を傾げた。

 

 

「クソ……中々うまくいかない」

マサキは焦れていた。もう肉眼で紅いPTが見えているというのに、兵装ビルと戦車が邪魔で思うように近づけない。それに何時このバリアーが破れてしまうだろうか、それがとても心配だった。

EVANGELIONのA.T.fieldはその程度の攻撃では破れる筈など無いが、無論マサキはそれを知らない。

一方的に撃たれ続けているマサキは徐々に不安な気持ちになっていく。

「お前ら、どっかいけえ!」

mk2は両腕を赤ん坊の様にぶんぶんと上下に振り回す。それを警戒した戦車は離れていくが、特に状況が変わったというわけでもない。効果は無いというのに砲撃はやまず、盛大に物騒な花火を上げている。

力はあるが、使いこなせないマサキ。力は無いが、緻密な戦略によって包囲していくNERV。この膠着状態を破ったのは、やはりミク達『INAZUMA』チームだった。

 

マゴロクEソードが、銀色の残像を残し兵装ビルを一刀両断にする。その音を皮切りにミク達は一気に戦車と兵装ビルの群れに飛びこんでいく。

そして、それ以上は武器を使わず、マサキのmk2の右腕を引っ張り、群れの中から引き上げていく。

一瞬の出来事だった。戦車部隊の攻撃など間に合う筈も無く、彼女等4機は消えていった。

 

当然、『消えた』というのは少々の語弊がある。正確には『逃げた』というのが正解だろう。

4機は『INAZUMA』に装備されていたブースターを使って、一気にジオフロントから脱出したのだ。それはmk2には装備されてはいなかったが、元々mk2を奪う作戦であったため、mk2を持ちあげられるくらいには強力なモノを付けていた。

「え、ええと……助けてもらって、ありがとうございます」

マサキはmk2を支えている周りの三機に通信回線を開いた。それも知識は要らなかった。マサキが考えるだけでよいのだ。

「名前は?」

NERV虎の子のmk2を盗んだ男(かどうかは彼らにはわからないが)、果たしてどんな強者だろうと考えていた部下だったが、そのマサキの言葉には一瞬だけ思考が飛んだが、何とか気を取り直して質問する。

「あ、俺…僕は安藤マサキといいます」

「君は何処かの組織のメンバーでは無いのか?」

もう一人の部下も同じく。

「はい…今日NERVに拘束されていて、それでコレを見つけて……」

「乗りこんでしまった、というわけか」

「はい」

まるで何処かのアニメのような設定だ。彼らは俄かには信じられなかった。

「瀬名一尉、どう思います?」

「どうもこうも…彼の言っている事は本当よ。そうだとすればフラフラしたmk2の動きも分かるし、本当のスパイだったらこんなに簡単に自己紹介なんかしないわ」

「ですが、それが全て嘘で、NERVの手先だとしたら……」

ミク達三人が話しこんでいるところに、マサキは割ってはいる。

「それで、俺はどうすればいいんでしょうか」

マサキはそれが心底から心配だったようで、折角『僕』に直したのにもう『俺』に戻っている。

「取り敢えずアタシ達と一緒に来るといいわ。NERVにはアタシ達は気づかれてないし、どっちにしろ間違い無くアンタはもう第三には居られないから」

無慈悲なまでのミクの声。当然ながらマサキには選択権など無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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