自分達のアジトまで辿りついたミク達。INAZUMAを整備させ、自分達も今は休んでいる。

「本当に……信じられないわ」

ミクは独り言を呟いた。

彼女が見ているのはmk2、そしてマサキのデータ。

「そうですね、彼のシンクロ能力は適格者としてもずば抜けています。今後の訓練次第では『あの』碇シンジをも上回るでしょう」

隣りの部下が答える。

その言葉にミクは口元だけで笑い、

「そうね……それが彼にとって幸せな事なのかは、私には分からないけど」

淋しそうに一言。

 

 

EVA//extra impact

episode02 intermission/determination

 

 

「え、ええと……瀬名、さん、でしたよね」

マサキは少し広めの会議室のような部屋にいた。

普段は特に使われていないようで、部屋の中はテーブルや椅子に埃がかぶっている事以外は散らかっているわけではない。

そこにいるのはマサキの他にはミクのみ。紅い髪に青い瞳と、ミクの容姿が普段見慣れないものでその上二人きりとあって、マサキは何となく緊張した。

「ええ、安藤マサキ君。貴方に話があります」

そんな事はここに呼ばれた時点で分かっている、下手な事言ったら殺されたりはしないよな。マサキはミクの顔を見た。

「まず最初に……マサキ君、貴方には適格者として最強レベルの才能があります」

「え、そうなんですか?」

適格者、というのはマサキも知っている。NERVがしきりに適格者検査とかいうのを受けさせたがって、大々的に宣伝している。

どうもそれをパスしてしまったら有無を言わさずNERVのパイロットとして認定されてしまうらしく、マサキ達のグループは誰もそんなもの受けようとはしなかったが。

で、何故いきなりこんな事を言うのだろう。マサキは困惑した。

「貴方が突然EVANGELIONmk2を起動し、なおかつA.T.field……オレンジ色のバリアーまで展開してみせたのはその才能によるところが大きいのよ」

マサキの困惑をよそにミクは続ける。

「元々mk2は高性能機で、適格者といえどそう簡単に起動できるものではないわ。しかし貴方はそれを訓練も無しにやってのけた……」

「ちょっと待ってください。そんな事をわざわざ俺に話してどうしようって言うんですか?」

「……………」

ミクはやや俯き黙る。

どうしたんですか?マサキがそう言おうとした時、ミクは顔を上げ、

「……マサキ君、貴方の力は私達にとってとても必要なの。これからパイロットとして私達の力になってくれないかしら」

ついに言ってしまった。自分自身の葛藤を押し殺し、無表情で。

 

「考えさせてください」数分後、マサキはそう言い残して部屋を出ていった。

ミクは椅子の背もたれに背中を預ける。

結局、自分が幾ら悩もうとそれは偽善でしかない。彼に対する償いにはなりはしない。そんな事は分かっているつもりだった。

自分が彼と同じ年の頃、どうしてた?戦っていた。それは楽しかったか?そんな筈無いだろう。

しかし、自分はそれと同じことを彼に要求している。このように要求されては、彼も断れないだろう。自分はそれを分かって言っているのだ。

一つだけ気が楽になる要因があるとすれば……『あいつ』とは違いマサキは前向きで活発だ。状況もまだマシといえる。『あいつ』よりは上手くやれるだろう。

自分はNERVとは違う。『仕方ない』とは言いたくない。言うわけにいかない。

だから、『大人』として、彼を戦いに巻き込むからには自分も戦わなければならない。彼の出番が無くなるほど、今まで以上に。

そう考えるしかなかった。

 

 

 

「よう、どうしたんだい?」

窓の外を見てぼんやりしていたマサキに声を掛ける男がいた。

「ええと、あなたは……?」

彼は確かミクと一緒にジオフロントまで来た部隊のメンバーだ。

マサキは顔は覚えていたものの名前は聞いていなかった。

「ああ、俺の名前は北川ケンイチ。ここでPTパイロットをしている」

歳は20代中盤あたりに見える。特に軍人と思わせるような筋肉質な体をしているわけでもなく、街ですれ違っても特に違和感の無い『普通の男』といった印象を受ける。

「どうも……」

マサキは適当に返事をした。

ケンイチはマサキの隣まで歩み寄る。

「瀬名さんに言われたことで悩んでいるのかい?」

「ええ、そりゃ……俺は、どうするべきなんでしょうか」

「この話を受けるにしたって受けないにしたって、嫌なことはあるし良いこともあるさ。受けないと君が言っても我々の方で君の生活は保証させてもらうから、そっちの心配はいらない」

「……俺は、NERVが嫌いです。あいつらのせいで俺は今まで碌な暮らしも出来なかった。だからあいつらと戦いたい、とは思うんです」

マサキは空を仰いだ。

「けど、あの時、俺は死ぬと思うととても恐かった。戦って死んだり怪我をするのが、恐いんです……」

ケンイチも空を眺めて、

「それは当然さ……俺だって戦うのは恐い。それが正常なんだ」

「だから、どうしたらいいのか分からないんです」

「………俺達として、組織としての意見を言うと、君が俺達に加わることはとても嬉しい事だ。しかし俺として、個人として言うと君には戦って欲しくは無い。矛盾しているが正直なところはそうなんだ」

「そうですか……」

ケンイチはそのまま黙った。それ以上、マサキに対して言える言葉は無かった。

 

 

「EVANGELIONmk2、か……」

格納庫、作業員達が機体のメンテナンスに走り回っている中、ミクは一人mk2を見上げていた。

黒の機体はロールアウトされたばかりという事もあって傷が少ない。しかし、それでも前の脱出劇で装甲は新品同様というわけにはいかない。

そう、戦闘を行わなくとも傷はつくのだ。

それが互いの命綱となるA.T.fieldを削りながらの戦闘だったらどうなる?

考えたくも無い。しかし考えなければいけない。

自分がマサキを戦場に送りこもうとしているのだ。かつての『奴ら』と同じように、『正義』のために。

全く持って反吐が出る。

自分がこの話をしておいておきながらおかしな事だが、マサキにはこの話を断って欲しかった。

やはり子供には戦って欲しくは無い。自分の忌まわしい記憶と共に、新しい戦いの犠牲者を出すのかという罪悪感が込み上げてくる。

「瀬名さん……」

ミクの後ろからマサキが声を掛けてきた。

「ああ、もう決まったの?」

内心の動揺に気付かれたくなく、さり気なくさらりと答えた。

「はい。俺も戦う事に決めました」

断言した。

「最初は、やっぱりやめようかとも考えたんですけど、俺には才能があるんでしょう?なら何とかやっていけますよ」

マサキは笑いながら頭を掻く。

「……本当にいいの?もう決めたからには戻る事はできないのよ」

あまりのマサキの気楽さに、もしかしてヤケになっているだけでは?とミクは逆に心配になった。

「……ええ、それに俺がやらなかったら他の誰かがやるんでしょう?」

それが本音か…。かつての自分とはえらい違いだ。ミクはマサキが大きく見えた。

「それは、そうだけど……」

「俺もNERVには一泡吹かせてやりたいと思っていたんです、これから宜しくお願いします」

努めて気楽に、世間話でもするかのようにマサキは言った。

これからの自分の運命に、押しつぶされないように。

 

 

 

 

 

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