C−part
マサキは、無言のまま基地に帰ってきた。中は相変わらずがらんとしている。人手不足というのは本当の事らしい。
自室に入る。しかし何かする事があるわけでもない。
「ヒマ……だなあ……」
ヒマを持ち余すのは嫌だった。しかし、何もやる事は無い。
何をしようか……。ベッドに横たわり、マサキはぼんやりと天井を眺める。
そうこうしているうちに、眠りに落ちた。
……………
………
…
何も無い……真っ暗だ。
何も見えない。どこに行けばいいのかも分からない。
誰もいない。誰かに話しかけて欲しいのに。
俺は……誰だ? 体が、自分の物ではないようだった。妙に華奢で、まるで女の子のようだ。
ぼんやり……ぼんやりと、俺はそこに座っていた。そこ、といってもどこだかまるで見当がつかない。ただ、寒くて暗い場所だった。
俺は誰だ? 再度、問う。
そこには鏡は無い。だから顔は分からない。
しかし、「自分で無い感覚」だけは鮮明に感じることが出来た。
体育座りをして、ただ前の暗闇を凝視した。当然、視界には黒が広がるだけ。
「アナタは……道具なのよ」
ふいに、何処からか声が聞こえた。
「ニンゲンじゃない……ただの兵器のパーツ。だから自分の考えも何も持つ必要は無いの……」
な……? 穏やかじゃない内容だ。それに何の脈略も無いじゃないか。
……そうか。これは夢か。どっかで見た光景がいろいろ組み合わさってこんなモノを見ているんだ。
そう考えると、この意味不明な状況にも納得がいった。
夢なら、夢として楽しもう。どうせまた、朝になったら現実が始まるのだから……。
「そう……アナタの名前は綾波レイ。『四人目』……いえ、『四体目』ね。
零号機2ndに搭乗して、私達NERVの敵を討つのよ……」
明るくなった。そうか……夢は終わるのか。
朝を告げる放送が入り、徐々に意識は覚醒していった……。
…
……
…………
変な夢だったな。
その程度の感想しか、マサキは持たなかった。
綾波レイ、という人物に関しても心当たりなど無かったし、NERVという単語に関しても嫌というほど聞いていたため夢に出たところで何の違和感も無かった。
カーテンの外からは陽光が漏れている。今日も良い天気だ。
「今日も、公園に行ってみようかな……」
彼女に、会えるかもしれないし。
何故か気になった。名前の知らない、あの少女の事が……。
この夢を見てから、その思いはさらに強まったのだが、マサキはその事には気付いていなかった。
レイは、この日もふらふらと出歩いていた。
あてがあるのかは分からないが……
妙に確信を持って進んでいる。
夢遊病者、というほどではないものの、白く輝く太陽の下を歩く姿は、神秘性よりも不気味さを際立たせていた。
確信というのは間違いかもしれない。むしろ、それは。
プログラム。
ただ、ナニカに受動的に従っているだけとも感じることが出来た。
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